「論理的で頭の良いだけのビジネスパーソン」が活躍できる時代は終わりを迎えます・・・。
環境が目まぐるしく変化する時代。
あなたは、新時代に適応したニュータイプのビジネスパーソン足り得るでしょうか?
仮に少しでも不安を抱いたのであれば、山口 周氏が著した本【ニュータイプの時代】を読んでください。
『ニュータイプの時代』概要
「ビジネスパーソンとしてバリバリ活躍して、稼いでやる!」
そんな野望を胸に、ロジカルシンキングを鍛えたり、自己啓発書を読み漁ったり、MBAの授業を受けてみたり。
何もしないで上司の命令に従うだけよりは、遥かに「優秀なビジネスパーソン」となれることでしょう。
しかし、これまでの「優秀なビジネスパーソン」が今後も活躍できるとは限らない。
環境が目まぐるしく変わり、王道とされてきた賢いビジネスパーソンの得意とする解決策の検討は時代に合わなくなってきました。
ニュータイプの時代では、変化を捉えた問題の発見・課題提起が求められる時代になっているのです。
そんな新時代に活躍するニュータイプになるため、24の思考・行動様式が記された【ニュータイプの時代】をご紹介します。
『ニュータイプの時代』おすすめ読者
- 勤勉で真面目なだけの自分に不安を抱くビジネスパーソン
- 将来的に向けて何を学べば良いか迷っている新人社員
- 社会人になるまえにキャリアについて考えたい大学生
『ニュータイプの時代』の章構成は以下になります。
各章に3~4つの思考・行動様式が記載されており、合計すると新時代を生き抜く24の思考・行動様式が示されています。
章構成
『ニュータイプの時代』章構成
- 第1章 人材をアップデートする6つのメガトレンド
― ニュータイプへのシフトを駆動する変化の構造 - 第2章 ニュータイプの価値創造
― 問題解決から課題設定へ - 第3章 ニュータイプの競争戦略
―「役に立つ」から「意味がある」へ - 第4章 ニュータイプの思考法
― 論理偏重から論理+直感の最適ミックスへ - 第5章 ニュータイプのワークスタイル
― ローモビリティからハイモビリティへ - 第6章 ニュータイプのキャリア戦略
― 予定調和から偶有性へ - 第7章 ニュータイプの学習力
― ストック型学習からフロー型学習へ - 第8章 ニュータイプの組織マネジメント
― 権力型マネジメントから対話型マネジメントへ
著者(山口 周 氏)紹介
著者は山口 周さんです。
アート思考やデザイン経営などの文脈で山口周さんの本を読んだことがある読者もいらっしゃるのではないでしょうか?
独立研究者・著作者・パブリックスピーカーという様々な肩書をお持ちですが、経歴や実績は本当に素晴らしいものがあります。
「山口 周」 とは
- 1970年、東京都生まれ
- 慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了
- 株式会社ライプニッツ代表
- 電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、
組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画 - 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』など著書多数
実は山口周さんの書籍は拝読させていただく機会が多いと言いますか、「気になる本を手にしてみたら著者が山口周さんだった」というケースが結構あります。
これまで拝読した本で言うと・・・
- ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式
- 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
- 知的戦闘力を高める 独学の技法
- 外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」
- 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント
- 外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック
- 外資系コンサルのスライド作成術 作例集: 実例から学ぶリアルテクニック
結構ありましたね。
「スライド作成術」の本はコンサル必読書として、こちらの記事でも紹介しています。

電通や外資系コンサルでお仕事をされていた経験に加え、哲学・美術史を専攻されていたというバックグラウンドから紡ぎだされる示唆はとても刺激的です。
「人文科学と経営科学の交差点」に活動をされているというテーマをお持ちで、私が【コンサルタント×カウンセラー】を志すきっかけになったのも山口さんの影響です。
書籍紹介
本書で定義されている「オールドタイプとニュータイプの違い」をまとめると下図のようになります。

第1章 人材をアップデートする6つのメガトレンド ── ニュータイプへのシフトを駆動する変化の構造
ニュータイプとして推奨する24の思考・行動様式を説明する前に、
変化の構造としての6つのメガトレンドが紹介するのが、この第1章の位置づけになります。
では、6つのメガトレンドとは何を指しているのか。
6つのメガトレンドとは?
- メガトレンド1 飽和するモノと枯渇する意味
- メガトレンド2 問題の希少化と正解のコモディティ化
- メガトレンド3 クソ仕事の蔓延
- メガトレンド4 社会のVUCA化
- メガトレンド5 スケールメリットの消失
- メガトレンド6 寿命の伸長と事業の短命化
高度経済成長期が終わり、先進国ではモノ余りの状態が定常化。
古き大量生産時代の遺産が環境を破壊し、情報技術・医療技術などの発展により人の生き方が変わる。
そんな時代が来ていることを改めて簡潔に記されています。
恐らく40代以上の方にとっては「何をいまさら」という感があるでしょう。
ですが、30代以下の人間は改めて、
自分の生まれ育った時代がこれまでの時代とは異なることを客観的に捉えなければなりません。
そうでないと、
過去の習慣が正しいものか、惰性なのか判断できなくなることでしょう。
まずはメガトレンドをしっかりと押さえましょう。
第2章 ニュータイプの価値創造 ── 問題解決から課題設定へ
20世紀後半以降の世界においては、
問題を発見・提起する人に価値があると説かれています。
世界の「あるべき姿」を構想し、
その姿に至るまでの課題を特定・解決にこだわることで、
結果としてイノベーションが起こる。
それがニュータイプの思考様式である一方、
オールドタイプは目の前にある見えている課題をイノベーションで解決しようと考え、
見えそうな未来へたどり着く方法を考える。
思考の順序が逆であり、能動的か受動的かの差があるように感じますね。
ニュータイプの価値創造
- 問題発見
1 問題を解くより「発見」して提案する
オールドタイプ 問題が与えられるのを待ち、正解を探す
ニュータイプ 問題を探し、見出し、提起する - 課題設定
2 革新的な解決策より優れた「課題」
オールドタイプ 課題に向き合わずにイノベーションという手段にこだわる
ニュータイプ 手段にこだわらず課題の発見と解決にこだわる - 構想力
3 未来は予測せずに「構想」する
オールドタイプ 未来を予測する
ニュータイプ 未来を構想する
第3章 ニュータイプの競争戦略 ── 「役に立つ」から「意味がある」へ
これからのビジネスにおいては「意味」の持つ力・「意味」を伝える力の重要性を増すといった内容です。
誰かにとって意味があるビジネスを、
課題解決ということにしっかりとフォーカスをして(ニッチだとしても)展開していく。
グローバルにビジネスを展開することが容易になった現代においては、
フォーカスをしたニッチなビジネスが広範囲に広がる可能性が高いということもあり、
「意味がある」を重視した競争戦略を提唱しているのが本章の内容になるかと思います。
ニュータイプの競争戦略
- 意味のパワー
4 能力は「意味」によって大きく変わる
オールドタイプ 目標値を与え、KPIで管理する
ニュータイプ 意味を与え、動機付ける - 限界費用ゼロ
5 「作りたいもの」が貫通力を持つ
オールドタイプ スケールを求めて市場におもねる
ニュータイプ 自分がやりたいことにフォーカスを絞る - ポジショニング
6 市場で「意味のポジション」をとる
オールドタイプ 「役に立つ」で差別化する
ニュータイプ 「意味がある」で差別化する - リーダーシップ
7 共感できる「WHAT」と「WHY」を語る
オールドタイプ HOWを示して他者に指示・命令する
ニュータイプ WHAT+WHYを示して他者をエンパワーする
第4章 ニュータイプの思考法 ── 論理偏重から論理+直感の最適ミックスへ
最近では至る所で語られるようになった「論理偏重」へのアンチテーゼです。
ロジカルシンキング・ルール・定量的マネジメントといったガチガチなマネジメント手法では、
意思決定に時間がかかるだけではなく、導き出された答えは差別化されていない「妥当なもの」になる。
VUCAな時代においては、そのように決めた判断も変化する環境に対応できない。
対応策として、論理と直感を使い分け、倫理観に基づいて意思決定に「遊び・余白」を持たせること。
論理が不要というわけではありませんが、
感情や倫理も大事にしていくことがニュータイプには求められるという示唆ですね。
ニュータイプの思考法
- 論理と直感
8 「直感」が意思決定の質を上げる
オールドタイプ 論理だけに頼り、直感を退ける
ニュータイプ 論理と直感を状況に応じて使い分ける - 野生の思考
9 「偶然性」を戦略的に取り入れる
オールドタイプ 生産性を上げる
ニュータイプ 遊びを盛り込む - 美意識
10 ルールより自分の倫理観に従う
オールドタイプ 組織のルール・規範に従って「無批判」に行動する
ニュータイプ 自らの道徳・価値観に従って「わがまま」に行動する - 意思決定
11 複数のモノサシを同時にバランスさせる
オールドタイプ 量的な向上を目指す
ニュータイプ 質的な向上を目指す
第5章 ニュータイプのワークスタイル ── ローモビリティからハイモビリティへ
「ハイモビリティ」という言葉を私なりに解釈すると、
自分が輝ける場所を探求しながら、成長を目指すワークスタイルだと思います。
大企業の会社員をしながら、個人で副業・複業をすることが普通になってきました。
様々な組織を渡り歩きながら、
多くの人と仕事をすることで「適応力」が高まっていくのではないでしょうか。
そのことが、結果として組織人としての価値も高めていく。
これからの時代は組織人としても個人としても活躍できる人間が輝けるのです。
ニュータイプのワークスタイル
- モビリティ
12 複数の組織と横断的に関わる
オールドタイプ 一つの組織に所属し、留まる
ニュータイプ 組織間を越境して起動する - 努力と成果
13 自分の価値が高まるレイヤーで努力する
オールドタイプ 今いる場所で踏ん張って努力する
ニュータイプ 勝てる場所にポジショニングする - モチベーション
14 内発的動機とフィットする「場」に身を置く
オールドタイプ 命令に駆動されて働く
ニュータイプ 好奇心に駆動されて働く - 知識と経験
15 専門家と門外漢の意見を区別せずフラットに扱う
オールドタイプ 専門家の意見を重んじる
ニュータイプ 素人の門外漢にも耳を傾ける
第6章 ニュータイプのキャリア戦略 ── 予定調和から偶有性へ
ワークスタイルの話を発展させて、キャリア戦略として捉えるとどうでしょうか。
環境は目まぐるしく変化する世の中に対し、
「ここだ!」と働く場所や職業を決めつけてしまうのは危険です。
一定の方向性を定める・考えることは必要ですが、
決めつけ過ぎず・こだわり過ぎずに様々な経験を得るために試してみることが重要です。
クライアントやプロジェクトによって様々な役割を求められるコンサルタント。
「適応力」という言葉はコンサルタントとして働く中でも重要だと思っており、
逆に言うと、自分に合う合わないを試す機会が圧倒的に多いのがコンサルタントという職業だと思います。
ニュータイプのキャリア戦略
- キャリア
16 大量に試して、うまくいったものを残す
オールドタイプ 綿密に計画し、粘り強く実行する
ニュータイプ とりあえず試し、ダメならまた試す - 逃走論
17 人生の豊かさは「逃げる」ことの巧拙に左右される
オールドタイプ 一箇所に踏み留まって頑張る
ニュータイプ すぐに逃げて、別の角度からトライする - 逃走論
18 シェアしギブする人は最終的な利得が大きくなる
オールドタイプ 奪い、独占する
ニュータイプ 与え、共有する
第7章 ニュータイプの学習力 ── ストック型学習からフロー型学習へ
「学ぶ」ことは時代を問わずに必要なこと。
しかし、「学び方」は変化させることが必要。
ニュータイプとしては、課題を解くためのサイエンスより、
リベラルアーツを元にした課題発見・問いの設定が重要となるそうです。
自分と異なる他者にも耳を傾けて、異文化からも新しい学びを得る受容力と
過去の学びに固執しないリセット力が良質な問いの設定に貢献することは肝に銘じておきたいですね。
ニュータイプの学習力
- リベラルアーツ
19 常識を相対化して良質な「問い」を生む
オールドタイプ サイエンスに依存して管理する
ニュータイプ リベラルアーツを活用して構想する - 気づき
20 「他者」を自分を変えるきっかけにする
オールドタイプ 要約し、理解する
ニュータイプ 傾聴し、共感する - アンラーン
21 苦労して身につけたパターン認識を書き換える
オールドタイプ 経験に頼ってマウントする
ニュータイプ 経験をリセットし、学習し続ける
第8章 ニュータイプの組織マネジメント ── 権力型マネジメントから対話型マネジメントへ
最後の第8章は組織について。
ヒエラルキーに縛られている組織では、
これからの時代に必要な柔軟性や自由さが失われてしまう。
同調や忖度が蔓延した組織では、
本来見るべき市場や顧客を見ずに、役員や上司のことを考える組織になってしまいます。
そんな組織に違和感を抱き、
立場に関係なく意見を言う優秀なビジネスパーソンを大事にする組織は大丈夫でしょう。
一方で、権力を重視して服従することを強制する組織は、
これから活躍するであろうビジネスパーソンに見切りを付けられてしまう。
組織で役職に就いている方には気付いてほしい現実です。
ニュータイプの組織マネジメント
- 権力の終焉
22 「モビリティ」を高めて劣化した組織を淘汰する
オールドタイプ 空気を読み、同調し、忖度する
ニュータイプ オピニオンを出し、エグジットする - 上司と部下
23 権威ではなく「問題意識」で行動する
オールドタイプ 肩書きや立場に応じて、振る舞いを変える
ニュータイプ 肩書きや立場に関係なく、フラットに振る舞う - 資本主義の脱構築
24 システムに耽落せず脚本をしたたかに書き換える
オールドタイプ システムに無批判に最適化する
ニュータイプ システムを批判し、修正する
オススメの実践項目
ニュータイプが取るべき24の思考・行動様式。
私がコンサルタントとして働くうちに自然と実践できていたことが多いように感じます。
提唱されている全てが必ずしも正しいというわけでも、実践しないといけないという話でもありません。
とはいえ、従来の「お利口なビジネスパーソン」という在り方に少しでも違和感があるのであれば、
この本を読んで自分の意見を発信することから初めてみてはいかがでしょうか?
ニュータイプの労働環境として
今回ご紹介した【ニュータイプの時代】に記載された思考・行動様式を実践していくことで、あなたのキャリアや市場価値は磨かれていくはずです。
ニュータイプの働き方を実践しやすい職業の一例として、コンサルタントが挙げられると思いました。
職業として「課題特定と解決」が求められるのは当然です。
プロジェクトやクライアントが変わることで、否が応でも知識を塗り替えて人間関係も構築し直し、過去の知見を発信して課題解決をリードしていくことが求められます。
そんなコンサルタントという職業はプレッシャーも多いですが、現在ではホワイト企業として労働環境が整備されてきています。
コンサルタントに期待される役割や求められる成長率は変わらない一方で、過度なブラック企業感はなくなってきているというのは若手にとっては最高の環境となるかもしれません。
もしもあなたもコンサルティング業界について興味があれば、筆者「きつね」がコンサル業界特化の転職エージェントに相談したときの体験談記事をご覧ください。
コンサルタントとしてビジネスパーソンのスタートを切ったのですが、「より自分に適したファームがあるのでは・・・?」と思い、転職活動をした際の記事になります。

山口周さんが出版されている他の著書についても記事を書いているので、覗いてもらえると嬉しいです!

今回、筆者「きつね」が実際に読んだオススメの本をご紹介させていただきました。
他にもコンサルタントとして多くの本を読んだなかで、「これは必読!」と感じた本を厳選した紹介記事も書いています!
ぜひよろしくお願いいたします!
